「京の異色日本画家たち」展 後記






























 「何処からこんなに古いものばかり見つけてくるのですか?」とは店に来られるお客様から例外なく投げかけられる質問。加茂川で朝の散歩中に拾うのですよと笑って答えることにしているのだが、15年もこの道一筋にやってきているから作品も貯まるだけのこと。10年も前に買ったもので未だ一度も店に並べたことが無いものも沢山ある。早く世に紹介したいと思うのだが、出す以上はより良く見せよう、効果的な展観にしようと時を選ぶことになる。
 京近美新館の開館記念展に便乗した形の本展も数年前から頭に描いてきたものである。もっとも、勝手にT開館を祝ってUなどと言われた京近美には誠に御迷惑かも知れないが許して戴きたい。スペースの無い画廊故、7週間連続の展覧会でほぼ1週毎の展示替えになる。これで予定の150点をようやく見てもらえるのだが、お近くの方は別として遠方の人達から御叱言を丁戴するのは目に見えている。そこで図録には欲張って図版を多く入れることにした。
 近年、大正期の日本画を中心とした埋もれた画家の発掘作業が一種のブームになってきているが、ここに取り上げた異色の画家達も本当は異色となってはいけない人達なのである。本来芸術家たるもの、それぞれが個性豊かな異色の存在であるのが当然なのに、わざわざT異色Uの文字をつけなければならない。昔も今も大衆の嗜好は反対の極にあり、気軽に入り込み易いきれいな作品が重宝される。取扱う画商も個性豊かな作品を良いとは認めながらも売りが遠いと腰を引く。巷に溢れる若者向けのDCブランドやテレビの同工異曲の番組、これらと同じ路線を美術界も突っ走る。
 けれどもいつの世でも極少数のつむじ曲りはいるもので、お蔭様で私のような零細画廊主が経営を成り立たせることができる。恵まれなかった画家達の遺産で日々の生活の糧を得ることのできる画商として、赤字覚悟の本展はせめてもの恩返しのつもり。是非一人でも多くの方々に個性豊かな作品を見て戴きたい。

星野桂三・星野万美子































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