描かれた名花「牡丹・芍薬」展 後記




































 梅、椿、桃、桜...と春の花々が競い合ってその盛りを誇り過ぎれば、あっという間に初夏の花、牡丹・芍薬の出番となる。古来、立てば芍薬、座れば牡丹と美人の形容に用いられている名花2種。故今の画家の手により描かれた名作は多々あり、名句また多くを数える。大阪での花博もあることだし、さればとて自分達のコレクションから牡丹・芍薬の絵を並べ立てようとそこら中をほじくりだしてみた。しかし何か大きな柱となるべき作品がない。村上華岳の墨牡丹があれば申し分ないところ。話を聞いたお客様のひとりがお貸ししますよと快く言ってくださったのに、そんな貴重な作品を借りてまで展覧会の自慢をしてもはじまらないから丁重にご辞退申し上げた。やはり発掘品を標榜する私の画廊では、美術館の大展覧会では漏れてしまうことの多い作家や作品を主に並べてみた。個々の作品の質は、それぞれ素晴らしいものと自負している。

 いつものように展覧会の準備にかかると、画廊のお客様用のテーブルの上が、散らかし積みあげた資料で埋まる。店に来られたお客様方とワープロをカタカタ叩きながら話をするということさえ起きる始末。これでは画廊なのか美術館の学芸課なのかさっぱりわからないなあと、自分自身でさえ感じる。家に帰ってもカタカタばたばた。同時進行で京都画廊連合会の月刊ニュースの編集、おまけに3年ぶりの京都画廊ガイドの編集作業もこなさなければならない。「結局あなたはそれが好きなんやね」と妻に呆れられながらカタカタやっている。世間では空前の美術ブームというのに、なにを好きこのんでこんな手間暇を喰う仕事ばかりしてしまうのか。もっと軽薄に儲けに走ることができれば生活も楽になるのだろうが、私にはできない。明日の暴落が目に見える今こそ、こういう目先の利に走らぬ仕事が必要なのではないかと思う。

星野桂三・星野万美子



































このウインドウを閉じる

Copyright (C) 2003 Hoshino Art Gallery All Rights Reserved.