星野画廊【展示のご案内】
盆休みの期間は休廊しましたが、7月9日(火)〜9月14日(土)までのロングラン企画「失われた風景・懐かしい光景」展を好評のうちに終えることをできました。期間中、連日の「不要不急の外出を控えてください」放送にもかかわらず、年齢層の高い方々を中心に、初見のお客様や多くの美術愛好家の方々が神宮道に足を運んでくださり、昔懐かし風景や失われた光景の数々を楽しんで頂きました。最終日には、《出町の緑雨》を描いた日本画家・前田荻邨の長女(満98歳)が孫たちに連れられて来訪。初めて見る父の作品と対面されました。数奇で有難いことです。
9月17日(火)に展示作品を全て入れ替えました。折からの仲秋の名月の季節。遅ればせながら名月を描いた作品を何点か展示しました。今年の異常気象により昼間の熱気が冷めやらぬ京都の気候です。いくら名月とはいえゆっくりと風情を楽しむどころではありません。そこで十三夜の名月(10月15日)までは、星野画廊で名月鑑賞をして頂ければと願い、所蔵品の中から月を題材にした作品を多めに選び出しました。お楽しみいただければ幸いです。
中央の作品は京都市立工芸学校の教師を務めた柴原魏象《月見草》(大正期)。こんな月見もあるのですね。左右に飾る軸装画は、孤高の洋画家・有道佐一による日本画作品です。フランス留学後に京都府綾部市の山家で画壇に背を向けて、故郷の風景を執拗な点描油彩で描いた洋画家です。ところが今回紹介している軸装画がフランス留学後まもなくの頃に描いたものであると知れば、新たな感動を覚えるところです。
右:《山渓名月之図》(1939年)は、故郷山家の自宅アトリエを舞台に、中国山水画に描かれる庵と月を楽しむ文人として自らをも描いて見せました。南画家の使用する画材とはひと味違う色彩豊富な山水画は、近代南画の名品と称して不足はありません。
左:《山峡名月》(1941年)の筆捌きを詳細に見てみましょう。渓谷の谷間深くからから無数の鶴が群れをなして岸壁を這うように飛び周り、下から上へ、左から右へ、やがて天空へと向かう様子を窺うことができます。群鶴蓬莱山図の変形とでも言えるでしょう。
月にちなんだ名作2点です。左に、玉村方久斗の院展時代の初期作品《月夜之図》―源氏物語よりー、そして右には、平井楳仙《去年之今夜》(大正期頃)を並べてみました。九州太宰府に流された菅原道眞が、前年の重陽の節句に下賜された醍醐天皇の御衣の残り香を拝している場面を描いた名作です。
今から74年前の京都で、京都で日本画を学ぶ新進日本画家たちが「パンリアル美術協会」を結成しました。阪神間の洋画家たちが活躍した具体美術協会が世界中で脚光を浴びていますが、京都日本画の前衛「パンリアル」を注目するコレクターたちがまだ現れていません。星野画廊ではパンリアルの重要作家、三上誠と下村良之介を多数所蔵しています。今回はパンリアルの日本画家たち作品を特集しています。
ご覧いただけるように、画廊コレクションから様々な洋画と日本画の作品を抜粋して展観しています。人気の藤田龍児をはじめ黒田重太郎や川端弥之助ら京都画壇の重鎮をはじめ、不染鉄や秦テルヲら作品本位で選び抜いた洋画と日本画の数々をお楽しみいただけます。ぜひ一度星野画廊へ月見にお越しください。