星野画廊【展示のご案内】

不染鉄・玉村方久斗・藤田龍児
―大正から昭和の異色画家三人展―

会期:2024年1月9日(火)〜2月3日(土)
10:30AM~6:00PM(毎週日曜・月曜休廊)

展示概要

 能登半島沖で起きた大震災の被災者の方々に心よりのお見舞いを申し上げます。1月1日の夕刻、新潟市美術館の学芸員F氏より現在同館巡回展示中の「少女たち展」の展示作品の無事報告を受けました。ご自宅も地震被害に遭われたことだろうに、地震直後に美術館の点検に駆けつけられたのです。当画廊のお客様の中にも被災地にお住いの方々が何人もおられますが連絡のつけようもありません。ただひたすら被災地の皆様方のご無事を祈り、厳しい寒さのつのる冬を乗り越えて希望の春の訪れを願うばかりです。

 さて星野画廊1月の展観では、大正から昭和期に活躍した3人の個性派画家を特集陳列いたします。

展示の模様

不染鉄の作品コーナー

不染 鉄(1891-1996)

東京小石川の寺の子として生まれ、日本美術院研究会員となるも伊豆大島で3年間の漁師生活をしたのち京都の絵画専門学校に学んだ。在学中に帝展に入選を果たすなどしたが、やがて画壇とは離れて各地を放浪し独自の道を歩むようになる。人生後半に居を定めた奈良の風景をはじめ、思い出の伊豆大島や神秘的な海風景を多数描いた。高名を求めなかった彼の芸術は長い間忘れられていたが、ここ数年の奈良や東京の美術館での遺作展開催もあって多くの人に知られるようになった。40年前から不染鉄の絵を追い求めてきた星野画廊の不染鉄コレクションの半数を1月13日から3月10日まで奈良県立美術館で開催される「特別展、漂泊の画家:不染鉄〜理想郷を求めて」に出品し、新出作品を含む10数点を現在画廊で展示している。

玉村方久斗の作品コーナー

玉村方久斗(1893-1951)

京都市中京区新京極に生まれ、京都市立絵画専門学校在学中には甲斐荘楠音、岡本神草らと蜜栗会の研究活動に参加。同校卒業後は東京に出て再興院展に《雨月物語》を出品し樗牛賞を受賞するなど活躍を見せたが、大観と衝突して院展を離れた。その後は未来派美術協会を結成するなどしたのち、1930年にホクト社展を興した(のち新興美術協会展となる)。昭和の初期に描いた自由闊達な筆捌きによる劇画タッチの絵画は時代の先端を行き過ぎたのであろうが、劇画・漫画ブームの昨今なら少しはその価値の見直しをしていただけるのではなかろうか。NHK大河ドラマの主人公紫式部の放送の縁もあり、本展では方久斗が描いた源氏物語や伊勢物語などの独特の絵画世界を堪能して頂けることでしょう。

藤田龍児の作品コーナー

藤田龍児(1928-2019)

京都市左京区に生まれ同志社工業学校に学んだが、終戦で故郷の和歌山県(現紀の川市麻生津)に戻る。戦後大阪市立美術研究所に学び、新制作展に出品。やがて美術文化協会展を生涯の作品発表の場とした。安井賞候補新人展に出品するなど活躍したが、1976年、77年と脳血栓の発作に襲われ半身不随となる。一時は画家の道を諦めたが、懸命のリハビリを続けた。81年に絵筆を左手に持ち替えて美術文化展に復帰し作品を発表、その後アイロニーを込めた独自のカラフルな油絵を描き続けた。2022年に東京ステーションギャラリーで開催されたアンドレ・ボーシャンとの二人展では、その異色の作品が多くの観客に感動を与えたことが記憶に新しい。