矢崎千代二は1900(明治33)に東京美術学校卒業。同年のパリ万国博覧会に油彩画2点出品、1903(明治36)年に大阪で開催された第5回内国勧業博覧会に油彩画を出品した。翌1904年にはセントルイス万博事務局員として渡米して同地で3年の画技研鑽の後、パリからベルギー、ドイツ、オランダ、ロンドンを歴訪して1909(明治42)年に帰国。アメリカとヨーロッパ滞在中に描いた作品による『矢崎千代二作歴游画集』を刊行した。その後白馬会展や文展で次々と作品を発表。1918(大正7)年に画材を油彩からパステル画に変更して世界漫遊の写生旅に出かけるようになった。
5尺一寸(約155センチ)の小柄な矢崎は、終生粗末な詰襟服に徹して、欧州、南米、インドから南アジアの国々を歴訪。訪問した現地や日本各地で展覧会を開催してパステル画の普及に努めた。1947(昭和22)年に北京で老衰のため病没。遺作約1000点を北京市に寄贈(現在中国中央美術学院美術館に保存されている)した。
昨年に東京目黒区美術館で開催されたパステル画の先駆者二人(矢崎千代二と武内鶴之助)を中心に、ドガやルドンを始め内外のパステル画の優品を集めた「日本パステル畫事始め」展は大評判となった。同展に数多くの矢崎作品の出品協力をしたために、矢崎の遺作展が今年になってしまった。同展に出品品しなかった初期の油彩画の名品を含めて57点の画廊収集品による念願の遺作展の開催である。多数のご観覧を期待している。
「ドイツ、マイソンの小河」 1908(明治41)年 65.2 x 47.6 cm キャンバスに油彩 |
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「蕪湖孔廟」 1918(大正7)年 33.1 x 45.0 cm 紙にパステル |
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「残照、ダージリン」 1920(大正9)年 61.2 x 46.2 cm 絹にパステル |
「ロアン河の朝」 1926 (大正15)年 第1回聖徳太子奉賛展 75.0 x 55.8 cm 紙にパステル |
「御大礼記念の四条大橋」 1929(昭和4)年 23.8 x 33.0 cm 紙にパステル |
展覧会図録発売中 生誕146年/没後70年 パステル画の巨匠 矢崎千代二世界漫遊の旅 忘れられた画家シリーズ(36) B5判 64頁 頒価:1,000円 |
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