展覧会開催の趣旨
星野 桂三
《もう1点の「拳を打てる3人の舞妓」を89年ぶりに初公開!》
夭折の美人画家、岡本神草(1894〜1933)の不朽の名作<拳を打てる3人の舞妓>には、これまで知られていなかったもう1点の習作があった。
第1回国展(大正7)年のデビュー作<口紅>の大評判に気を良くした神草は、翌年の第2回国展に意欲作<拳を打てる3人の舞妓>を出品すべく制作に励んだ。しかし、遂に期日に間に合わず、作品は未完のままに終わった。翌9年の第3回国展に改めて同名の大作に挑んだが、不幸にも制作途中で展覧会締め切りとなり、急遽3人の舞妓の真中だけを切り取って出品した。
1987年に切り取られた作品の残部が遺族の家で発見され、67年ぶりに3人の舞妓が合体されてひとつの作品として蘇った。
今回発表する作品は、1987年に切り取られた残部と共に発見されていたものである。その後の研究で大正8年(1919)の第2回国展のために制作され、未完のまま放置されていたものと判明。1年余の修復作業の結果、<拳を打てる3人の舞妓>は見事に復活、ここに大正8年の制作以来89年ぶりに初の公開の手はずとなった。
今回の遺作展では、<拳を打てる3人の舞妓>へ至る岡本神草の画家修行のあらかたを示すデッサン、下絵、日記、スケッチ帳などを一堂に展観する。また現在判明している岡本神草作品を可能な限り展覧会図録に掲載することで、今後の大規模な遺作展への礎としたい。
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