星野画廊【展示のご案内】
人体をどのように描くかは、西欧の巨匠たちにも共通命題として重要だった。美の象徴的存在である裸婦に於いてはことさらのことであった。西欧に留学した若き才能たちは、そうした巨匠たちの指導の下、重視された人体表現や画法を学び、数々の裸婦像名作を生み出すことになった。山本芳翠《裸婦》(1880年=明治13 岐阜県美術館蔵)、百武兼行《臥裸婦》(1881=明治14頃、石橋財団石橋美術館蔵)や、五姓田義松《西洋婦人像》(1881=明治14)年、東京藝術大学蔵)など、明治初期洋画導入期に燦然と輝く名作群である。
今を去る130年前の1895(明治28)年4月1日から7月31日まで、桓武天皇の平安遷都1100年記念の第4回内国勧業博覧会が京都市岡崎で開催された。その時、有名な黒田清輝の《朝ちょうしょう妝》(のちに戦災で消失)事件が起こった。公共の場で女性の裸の絵を展示することは猥褻であると官憲が咎めて、絵の下半身部分を布で覆って展示させたのである。
それから相当の年月を経て、洋画家のみならず日本画家の間でも裸婦を描くことは通常の行為となり、数々の名作が生み出されてきている。
星野画廊は、これまで様々な角度から洋画や日本画の隠れた名作の発掘に努力してきた。裸婦像も同じである。1996(昭和71)年1月に「裸体の表現〜男と女〜」展を開催した。同展は、前年1月17日に発生した阪神淡路大震災と、天下を騒がせた地下鉄サリンとオウム真理教事件に端を発して、人間活動を様々に考え直す機会を与えられたことで始めた企画展シリーズの一つだった。
今回開催する「日本の裸婦」展には、40人の画家による油絵と日本画作品、これまで秘蔵の作品群を含む総数57点を用意している。是非ご高覧いただきたい。
五姓田義松 《温泉之図》 明治中期頃 60.8×77.0cm 油彩・25号P |
池田治三郎 《緑陰》 1932(昭和7)年頃 50.0×60.7cm 油彩・12号F | 伊谷賢蔵 《裸体》 1930年 24.3×33.4cm 油彩・4号 |
田辺 至 《横たわる裸婦》 昭和初期頃 45.7×53.0cm 油彩・10号F |
黒田重太郎 《裸女習作》 1952年 第6回二紀展 45.3×60.5 cm 油彩・12号P |
甲斐荘楠音《裸女》 1930(昭和5)年頃 46.3×51.6cm 絹本に膠彩顔料・額装 |
広田多津 《裸女》 1951(昭和26)年 133.8×44.9cm 紙に膠彩 |
向井久万 《月明裸婦》 1951(昭和26)年 133.1×44.9cm 紙に膠彩 |
服部喜三 《水辺の裸婦》 昭和初期頃 油彩20号 |
津田青楓《裸婦習作》 1930(昭和5)年 油彩30号 |
B5判 68頁 図版57点
頒価:1,500円(税込) 送料:320円