星野画廊で開催した主な展覧会─77

生誕90年/没後37年/パンリアル60周年
三上 誠の生涯
〜恐怖と寂寥が芸術を作る〜

2009(平成21)年 1月16日(金)〜2月8日(日)


 




展覧会開催の趣旨
                 
星野 桂三

 戦後、日本画壇の因習を打破し、画家それぞれの自由な発想による芸術の芽生えを重要視した個性派集団パンリアル美術協会。その創立(1949年)に深くかかわり、精神的主柱として画友たちから敬愛されかつ畏怖された三上誠。彼の生涯は結核という不治の病との闘いでもあった。4度の胸部切開手術により11本の肋骨を失う。薬の副作用による幻覚とも戦いながらも増々研ぎすまされてゆく深い思索と感覚。日常の憂鬱と寂寥さえも糧として作品に昇華してゆく強靭な魂が、数々の名作を産み出した。
 1972年1月16日に52歳の苦悩の生涯を閉じた三上誠。当画廊で10年前に遺作展を開催したが、その後も作品の収集を続けた。初期の水彩<楽園>(1954)から、<荒地>や<碑>といった重々しい苦悩をぶつけた作品群、その後結婚に伴う束の間の精神の安堵を描いた<紅の季>シリーズ、ダンボールや木片をコラージュした様々な造形的トライアル作品、のろわれた人生の苦悩をぶつけた<輪廻>シリーズ、痛みと苦悩を灸によって和らげようとし、占星術や仏教思想に深い愛着を示した<灸点人物>シリーズ、最晩年の幾何学的図形が現れる<凍結の生理>や<機構の生理>の生と死を極めて理知的に描いた作品群まで、その人生をほぼ網羅する50点の作品による今回の展覧会にこぎ着けた。
 現代に流行る軽いポップ調の漫画的絵画やフィギュアと称する玩具のような立体作品とは対極にある三上誠の作品群を並べることにより、素晴らしい芸術は深い精神性により産み出される必然であることを実証できるのではないかと考える。

 展覧会初日を三上誠の37回忌の命日とした。是非ご覧いただきたい。


日本画変革の原点としての三上誠       針生一郎


三上 誠の生涯展 (展示作品)

NO. 〈題名〉 〈制作年代〉 〈作品寸法〉 〈素材・技法〉
「作品」(F41)

1949年 
第2回パンリアル展
(大阪)

74.6×91.2cm 板張りの紙に顔料、セメント
「楽園 No.5」 1954年10/29 11.9×28.8cm 紙に水彩
「作品B」   1955年 68.0×54.8cm 紙にインク、鑞、顔料
「点綴星座」 1959年 
第17回パンリアル展
90.0×110.6cm 板張りの紙に石膏、砂、紐、板切れコラージュ、岩彩
「作品C 」 1959年 
第17回パンリアル展
92.1×92.2cm 板張りの紙に石膏、縄、鑞、板切れコラージュ、岩彩
「碑」

1960年 
第3回パンリアル東
京展

121.5×61.5cm 板張りの紙に和紙コラージュ、鑞、岩彩
「作品」 1960年頃 120.3×62.2cm 板張りの和紙に紙コラージュ、鑞、岩彩
「陽」 1960年 
第18回パンリアル展
45.5×92.5cm 板張りの紙に砂、和紙コラージュ、墨、岩彩
「結晶・器」  1960年 
第18回パンリアル展
92.7×35.5cm 板張りの紙に和紙コラージュ、砂、墨、鑞、石膏、岩彩
10 「作品」 1960年頃 91.0×37.0cm 板張りの紙に和紙コラージュ、墨、鑞、岩彩
11 「作品」 1960年頃 88.0×0.6cm 板張りの紙に和紙コラージュ、墨、インク、岩彩
12 「ウルカの星 B 」 1961年 
第19回パンリアル展
51.6×121.8cm 板張りの紙に和紙コラージュ、墨、岩彩
13 「作品」 1960〜61年頃 61.2×91.8 cm 板張りの紙に和紙コラージュ、墨、鑞、岩彩
14 「化石」 1960年 
第18回パンリアル展
68.1×40.4cm 板張りの和紙に紙コラージュ、砂、墨、岩彩
15 「荒地」 1960年頃 91.8×90.4cm 板張りの紙に紙コラージュ、墨、岩彩
16 「荒地」 1960年 121.0×92.0cm 板張りの紙に和紙コラージュ、墨、鑞、岩彩
17 「作品」 1960年 
第18回パンリアル展
62.0×92.5cm 板張りの紙に和紙コラージュ、鑞、墨、石膏、岩彩

18

「象3」 1961年 
第3回パンリアル
試作展
92.5×45.3cm 板張りの紙に和紙コラージュ、墨、岩彩
19 「作品613」

1961年
第3回パンリアル
試作展

92.5×91.0cm 板張りの紙に和紙コラージュ、墨、鑞、岩彩
20 「作品612」

1961年 
第3回パンリアル
試作展

92.6×60.6cm 板張りの紙に和紙コラージュ、墨、鑞、岩彩
21 「作品」 1960年〜62年頃 72.4×46.6cm 板張りの紙に砂、段ボール、紙コラージュ、墨、岩彩
22 「作品」 1961年頃 89.1×40.6cm 板張りの紙に和紙コラージュ、墨、岩彩
23 「ポテンシャル空間」 1961年 76.4×92.0cm 板張りの紙に和紙コラージュ、鑞、岩彩
24 「作品」 1961〜62年頃 92.0×91.5cm 板張りの紙に和紙コラージュ、墨、鑞、岩彩
25 「作品」 1960〜62年頃 120.3×60.3cm 板張りの紙に和紙コラージュ、鑞、岩彩
26 「作品―赤と黒」 1962年頃 120.0×92.0cm 板張りの紙に和紙コラージュ、墨、岩彩
27

「作品」
(紅の季節に該当か?)

1961年頃 151.2×92.0cm 板張りの紙に和紙コラージュ、墨、岩彩
28 「作品(62―63)」 1962〜63年頃 52.0×30.4 cm 板張りの紙に紙コラージュ、墨、岩彩
29 「作品2」 1963年 
第21回パンリアル展
121.4×31.2cm 板にダンボール、木片コラージュ、岩彩
30 「作品」 1962年頃 90.7×62.0cm 板にダンボール、木片、岩彩
31 「作品4」 1963年 
第21回パンリアル展
121.2×76.0cm 板にダンボール、木片コラージュ、岩彩
32 「壁画による試作」 1964年 91.7×121.0cm 板に木片コラージュ、岩彩
33 「作品 64-2」 1964年 
第22回パンリアル展
91.2×91.7cm 板に木片コラージュ、岩彩
34 「作品 64-11」 1964年 
第22回パンリアル展
91.2×91.7cm 板に木片コラージュ、岩彩
35 「オブジェ」 1966年 12.5×32.0×12.0 cm 木、木片コラージュ、哲、岩彩
36 「輪廻、作品2」 1965年
第23回パンリアル展
91.5×76.5 cm 板張りの紙に和紙コラージュ、鑞、墨、岩彩
37 「輪廻の記号」 1965年 
第23回パンリアル展
76.0×64.2cm 板張りの紙に和紙・ダンボールコラージュ、墨、鑞、岩彩
38 「灸点人体」 1965年頃 121.4×30.4cm 板張りの紙に和紙コラージュ、岩彩
39 「作品」 1965〜68年頃 121.4×30.4cm 板張りの紙に和紙コラージュ、岩彩
40 「作品」 1965〜68年頃 90.6×61.5cm 板張りの紙に顔料
41 「人物習作」 1965〜68年頃 91.6×60.1cm 板張りの紙に墨、岩彩
42 「作品」 1967年頃 48.8×48.6cm 板張りの紙に岩彩、紙コラージュ
43 「環(経路)4」 1967年 110.0×91.5 cm 板張りの紙に紙コラージュ、岩彩
44 「環・経路習作」 1968年頃 125.8×65.2cm 板張りの紙に墨、和裁コラージュ、岩彩
45 「作品」 1968年頃 91.0×91.0cm 板張りの紙に岩彩、紙コラージュ
46 「作品」 1969年 75.9×60.8cm 板張りの紙に紙コラージュ、岩彩
47 「日々の凍結の生理」 1969年頃 96.5×91.0cm 板張りの紙に石膏、紙コラージュ、インク、岩彩
48 「凍結の生理」 1969年頃 69.8×60.5cm 板張りの紙に石膏、紙コラージュ、岩彩
49 「機構の生理」 1970年頃 91.3×80.9 cm 板張りの紙に石膏、インク、岩彩
50 「環・経路」 1968年 91.5×91.5cm 板張りの紙に岩彩、和紙コラージュ
追加 「戦災風物誌」 1948年 
パンリアル展
52.0×74.2cm 紙に岩彩

【展覧会図録】:B5版 64頁(1500円)


  「後   記」……………………………………………… 星野 桂三


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