忘れられた画家シリーズ37「バラの名手二人展」
真野紀太郎(水彩)/池田治三郎(油彩) 2016年5月17日(火)〜6月11日(土)

展覧会趣旨


展示の模様

 多くの画家が様々に描いてきた華やかなバラの絵は、心を慰め励ましてくれたりする身近な、時にはかけがえのない存在として、人々の暮らしの中で潤いを与えてきました。なかでも巨匠梅原龍三郎の薔薇の絵は高い評価と人気を得てきましたが、梅原と同時代を生きたバラの名手二人の存在も忘れてはならないと思います。

 繊細な水彩で描くバラの絵で知られる真野紀太郎は、1871(明治4)年に名古屋市に生まれた。東京の英語学校に学んだ後、明治初期洋画開拓者のひとり中丸精十郎に師事し、その没後は原田直次郎の画塾に入門した。早くから水彩画を得意として、1913(大正2)年の日本水彩画会の創立には主導的役割を担った。彼は生涯を通して「水彩で描くバラの名手」として多くの作品を描いて人々に親しまれた。1958(昭和33)年東京都大田区で87歳の生涯を閉じた。

 池田治三郎は1888(明治21)年神戸市に生まれた。京都の関西美術院で鹿子木孟郎に師事して徹底的な写実の腕を磨いた。1912(大正元)年の第6回文展で三等賞を受け、その後は主に裸婦像や人物画を描いて帝展や新文展で活躍した。一方で彼の描く初期の重厚感のあるバラや後半生の透明感溢れるバラの絵は、青年期の写実研鑽の技に裏打ちされて見事であることから、主に関西地方の愛好家の間で絶大なる称賛を浴びた。1966(昭和41)年三重県多気町相加で78歳の生涯を閉じた。

 本展では、水彩画と油彩画を代表する「バラの名手」二人の作品を展観いたします。不透明水彩を多用して繊細に、ときに大胆な筆触でバラの生命力と華やかさを描いた真野紀太郎。重厚な筆触でありながら花びらのかろやかな透明感を逆光の中に見事に浮かび上がらせる池田治三郎。二人の技の競演をお楽しみ下さい。なお池田治三郎の写実の魅力を同時展観の裸婦像などでも実感して頂けます。

展覧会図録

展覧会図録発売中
 
—忘れられた画家シリーズ37—
バラの名手二人展
真野紀太郎(水彩) / 池田治三郎(油彩)
 
B5判 32頁
1,500円

バラの名手二人展 出品作品リスト

No. 作者名 題名 制作年 寸法 技法
1 真野紀太郎 「バラ」 1933(昭和8)年 29.1 × 37.4 cm 紙に水彩
2 真野紀太郎 「ばら」 1930(昭和5)年 31.8 × 25.5 cm 紙に水彩
3 真野紀太郎 「薔薇」 1936(昭和11)年 55.6 × 75.7 cm 紙に水彩
4 真野紀太郎 「薔薇」 1932(昭和7)年 38.7 × 28.7 cm 紙に水彩
5 真野紀太郎 「カーネーション」 1937(昭和12)年 28.0 × 38.5 cm 紙に水彩
6 真野紀太郎 「バラ」 1940(昭和15)年頃 36.5 × 58.8 cm 紙に水彩
7 真野紀太郎 「薔薇」 1937(昭和12)年 39.0 × 57.0 cm 紙に水彩
8 真野紀太郎 「バラ」 1939(昭和14)年 32.7 × 44.8 cm 紙に水彩
9 真野紀太郎 「バラ」 1938(昭和13)年 38.5 × 50.0 cm 紙に水彩
10 真野紀太郎 「ばら」 1940(昭和15)年 34.5 × 58.5 cm 紙に水彩
11 真野紀太郎 「薔薇花」 1943(昭和18)年 58.0 × 77.3 cm 紙に水彩
12 真野紀太郎 「バラ」 1948(昭和23)年 27.5 × 36..6 cm 紙に水彩
13 真野紀太郎 「バラ」 1950(昭和25)年 32.3 × 45.0 cm 紙に水彩
14 真野紀太郎 「バラ」 1952(昭和27)年 33.4 × 45.4 xm 紙に水彩
15 真野紀太郎 「バラ」 1954(昭和29)年 37.7 × 57.4 cm 紙に水彩
16 真野紀太郎 「バラ」 1954(昭和29)年 41.0 × 52.5 cm 紙に水彩
17 池田治三郎 「赤い壺のバラ」 昭和初期頃 45.1 × 37.7 cm キャンバスに油彩
18 池田治三郎 「薔薇」 1926(昭和初)年頃 50.0 × 60.4 cm キャンバスに油彩
19 池田治三郎 「鉢植えのバラ」 1919(大正8)年 50.0 × 60.2 cm キャンバスに油彩
20 池田治三郎 「薔薇(裏庭の)」 1920年代頃 50.2 × 60.2 cm キャンバスに油彩
21 池田治三郎 「バラ」 昭和前期頃 45.2 × 33.1 cm キャンバスに油彩
22 池田治三郎 「ばら」 1935(昭和10)年頃 38.1 × 45.3 cm キャンバスに油彩
23 池田治三郎 「薔薇」 昭和前期頃 39.5 × 45.3 cm キャンバスに油彩
24 池田治三郎 「バラ」 1935(昭和10)年頃 38.2 × 45.2 cm キャンバスに油彩
25 池田治三郎 「白バラ」 1935(昭和10)年頃 24.3 × 33.2 cm 板に油彩
26 池田治三郎 「髪に手をやる裸婦」 昭和初期頃 45.2 × 52.6 cm キャンバスに油彩
27 池田治三郎 「緑陰」 昭和初期頃 50.0 × 60.7 cm キャンバスに油彩
28 池田治三郎 「具足」 昭和初期頃 61.0 × 45.7 cm キャンバスに油彩
29 池田治三郎 「カーネーション」 昭和初期頃 45.5 × 60.7 cm キャンバスに油彩
30 池田治三郎 「カーネーション」 昭和初期頃 45.6 × 60.5 cm キャンバスに油彩

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