星野画廊【展示のご案内】
阪神淡路大震災から30年、東日本大震災の巨大津波から14年。南海大地震や地球温暖化による異常気象。様々心配事はあるにしても、日本には固有の美しい風景が存在し、自然との共存を願う人間が明日への希望を失うことなく暮らしている。過去幾多の名画家たちは、独自の視線と技法により日本の風景美を見事に描き留めてきた。名作揃いの癒し空間となる本展をご高覧頂ければ幸いである。
朝焼けの富士を背景に水蒸気が立ち昇る芦ノ湖の感動的な一瞬を描いた中澤弘光。故郷阿蘇の大観峰の光景を壮大なスケールで描いた間部時雄。吉田山の神麓、雪の夜景を情感豊かに描いた真如堂の画僧・斎藤真成。湖国蒲生の夕照を大胆な筆致で捉えた野口謙蔵。大正期国画創作協会の画家たちが好んで描いた波切を俯瞰的に描いた河合新蔵は、海浜松原の真夏の光景や湿潤な山里風景にも見事な画技を発揮。奈良公園の秋、巨木の根元に視線を集約することで古都の長い時間の推移を示唆する和田英作。
黒田清輝の失われた代表作《昔語り》で、歌枕にも読まれた聖地への路を緑の豊かな階調で描いた鹿子木孟郎。浅井忠ら関西美術院の洋画家たちが好んで描いた京洛八瀬。その名所の錦秋風景を見事に描切った神官画家・伊藤快彦。平安神宮の紅枝垂を愛情深く描いた黒田重太郎。点描筆法で故郷の春秋風景を執拗に描いた有道佐一。四国の名峰石鎚山に向かう深山の紅葉を清々しく描いた高橋虎之助。東北金華山の晩秋を描いた鶴田吾郎。南国紀州海岸の燈台光景を独自の動画的な情感で描いた藤田龍児。シュルレアリスト北脇昇が描いた柿の木はやはりシュールな骨格。挙げればキリがない見所満載の名作ぞろいの展観である。
![]() 鹿子木孟郎「加茂川の上流」 昭和初期頃 油彩12号P |
![]() 河合新蔵「漁村(波切)」 1916(大正5)年 油彩25号P |
![]() 野口謙蔵「蒲生野の夕照」 1941(昭和16)年頃 油彩SM |
![]() 黒田重太郎「平安春色」 1939(昭和14)年 油彩10号F |
![]() 中澤弘光「箱根芦ノ湖の朝」 1935(昭和10)年 油彩30F |
![]() 藤田龍児「灯台へ登る道」 1990(平成2)年 油彩10号F |