『星野画廊50年史』
明治・大正・昭和、発掘された画家と作品

『星野画廊50年史』

青幻舎 2023年6月刊
特B5判 248頁
頒価:3,600円(+税)
青幻舎 書籍紹介ページ

―異色画廊の近代美術発掘史―

1973年に東山区三条大橋東入の三条通で星野画廊を創業。10年後の1982年に現在地の東山区、岡崎・神宮道に移転して本格的な展覧会活動を開始しました。創業以来、明治・大正・昭和前期の埋もれた画家と作品を紹介する活動を続け、画廊の看板シリーズ「忘れられた画家シリーズ」を始め、これまで160回に及ぶ展覧会を企画開催してきました。そうした活動の全貌が、本著掲載の1000点の圧倒的な図版量(展覧会案内状や図録、会場スナップや新聞評などのスクラップ)により一望できます。京都のみならず日本近代美術史研究の一助となる資料だと自負しています。

一般書店、アマゾンなどでも購入できますが、星野画廊にご注文いただくと税込価格3,960円で冊子を送付いたします。

星野桂三(星野画廊主)

『石を磨く』 - 高階秀爾(美術史家)

星野さんは不思議な人である。画廊を訪れると、そのたびに必ず、今まで見たこともない ような、それでいて思わず眼を奪われる見事な作品がいくつか並んでいる。いったい誰の絵かと尋ねると、初めて聞く名前が返って来る。そればかりでなく、あの狭い画廊のどこに隠れていたのかと思われるほど次々と、珍しい作品が姿を現わす。まさしく「開けごま」の世界である。

このようにして新たに世に出て来た作品はどれほどの数にのぼるだろうか。その一端が、毎週一回、産経新聞(大阪版夕刊) 紙上で二年間にわたって紹介されたが、それを一本にまとめたものが本書である。

取り上げられている作家は、まだ正体不明の画家も含めて95人、作品数は99点、そのほとんどがこれまでは知られていない、あるいはかつて有名であっても今では忘れられてしまった異色作品ばかりである。それでいていずれも、一度見たら忘れられることのできないような独自の輝きを放っている。流派や知名度などにはおよそこだわらずに、ただ作品の質だけを見極めるという態度で、これらの文字通り「珠玉」の名にふさわしい作品を見いだしたその鋭い選択眼には、驚嘆するほかはない。

ひとつひとつの作品につけられた文章がまたいい。作品との思いがけない出会いの状況や作者の人となりを伝えるエピソードなども興味深いが、星野さんの本領が発揮されるのは、未知の作品の正体を明らかにしていく徹底した調査活動においてである。ほんのわずかな手がかりから作家が誰であるか突きとめる話や、新出作品が実は記録にだけ残されていた展覧会出品作であることがわかったという打ち明け話など、隠されていた歴史が明らかになるスリルを感じさせる。そして何よりも、優れた「珠玉」を発掘したときの喜びが素直に読者にも伝わって来るのが快い。鮮明な図版とともに、いつまでも楽しみたい一冊である。

星野桂三著『石を磨く 美術史に隠れた珠玉』(産経新聞社、2004年)発刊当時の書評を再録しました。